北陸の峠道
馬借(西)街道・大坂峠越え
府中(武生)から越前海岸の甲楽城・今泉に通ずる馬借(西)街道については、今更紹介することも
ないのだが、このおよそ15kmの道は、室町時代より「馬借」と呼ばれる運送業者が活躍し、越前
海岸からは船に連絡していた。戦国時代、朝倉氏により大改修が行われ、有事のさいの軍用路とし
て用いられた。また、親鸞聖人や蓮如上人、はたまた紫式部も片道はここを通ったという説もある。
これ程由緒のある街道で、且つごく近い所にあるのにまだ歩いていなかったのだ。そこで急に思いつ
いて、朝のうち地図で場所を確認して昼から武生市廣瀬町の追分に向けて車を走らせた。
廣瀬町の追分 左へ行くと大坂峠を経て下中津原へ抜ける馬借街道
2万5千分の1地図には山を越える道が載っていないので、その場所へ行ってみるしかない。追分に
ある案内には、保存されている道は、ここ大坂峠越えの部分と梨の木峠を越えて今泉へ下る部分の
2カ所だ。そこでまずこの先の大坂峠越えだが、途中工事中でこの先車を置く所がないとある。でも
一応細い道を進んでみると、やっぱり重機やダンプカーがいて引き返す。そこで下中津原町へ向かう。
県道湯谷王子保停車場線の下中津原の馬借街道への入り口
下中津原町の県道沿いに案内があり、その前に何台か車を停められる。黄金色の稲穂を見ながら案
内に従って農道を15分ばかり、右手の方へ曲がってしばらくで左手の杉林に入り、史跡の道が始ま
る。最初はあまり良い道とはいえないが、だんだんと趣が増してくる。やがて平行して道がある様にな
ると平坦な処になり石碑と木のベンチがある。そこからすぐにお地蔵さんのいる大坂峠だ。
大坂峠 右の急な坂を降りて行くと廣瀬方面へ
今日は台風の余波で風があるので助かったが、それでも汗はひどく帽子などかぶっていられない。水
も持たずで、手にはgps と傘のみだ。gps は地図上に正確な軌跡が欲しかったので、水平に上に向
けて持ち歩いたのである。
大坂峠のすぐ下からの展望
峠のすぐ下から廣瀬の町や遠く武生の街が見晴らせる。峠からは一気に下る感じで、深く掘れた道を
降りて行くと「馬の荷直し道」が2カ所、そしてお地蔵さんの居る「水場と休み場」を過ぎると間もなく街道
の案内板があって工事現場が目に入ってくる。保存された道はここまでだ。歩き出してちょうど1時間、
距離2.81km、保存道のみでは45分、1.5kmくらいだと思う。
深く掘れた道 永い年月使われた道らしい
すぐ折り返したが、短い距離だが峠を登るという感じだ。峠まで登ればあとはゆっくり下るだけなので、
喉の乾きも我慢できた。お地蔵さんの居るカーブを曲がると間もなく、眩しいくらいの稲穂が折からの強
い風に波打っていた。
('04年8月19日)
<足跡>
HOMEPAGEへ 北陸の峠道の目次へ
両方の入り口にあった案内板
趣のある道だ
水のみ休み場
下中津原へ下ると目の前に拡がる実り豊かな田圃 昔はどうであったか