福井の小さな山歩記
越前甲(1999・11・23)
昨日の暖かい晴天から、今日は曇天に変わってしまったが,雨は降らないという
ので7時半に家を出た。越前甲(えちぜんかぶと
1,319.6m)は名前がいい。しかし
何故か険しいと云う様な先入観があって、これまで登らなかったが、だんだん近
い所で登る山が無くなってきたので今回登ることとなった。
登山口の駐車場には6〜7台が停まっていて7・8人が登り始めるところだった。
みなさん奥太山林道を歩くので,私も後に続いたが,30分も掛かってしまった。
大日峠までは沢に3度ばかり出るが比較的楽に歩けた。昔の旅人は、この峠を
越えて加賀へ抜けたのだと云う。今でも石川県側へ下る道は歩けるのだろうか。
いずれにしても昔は大変だったのだ。
大日峠からは急登の連続で,おまけに雪解け水のためか滑る所が多くて、なか
なか普通に歩けない。やっと急登が過ぎたと思ったらザラメの雪道になった。こ
れもなかなか歩きにくい。昔,白馬の大雪渓をよたよたと登っていたら、山岳巡視
員とやらがやってきて「そんなにゆっくりでは、山小屋に着くまでに日が暮れてし
まいますよ」と言う。そう言われたからといって急に早く歩く訳けにはゆかないの
である。でも今日は、今のところすぐ後ろには誰もいないし、頂上ももうすぐらしい
ので気兼ねせずによたよたと歩いた。
歩き始めて2時間15分で頂上に着いた。ちょうど11時、かみさんに無事到着の
電話をする。当然だが頂上は雪が積もっていて風があるし寒いのである。景色ど
ころではない。立ったまま食事をしている方が二人いて、間もなく下山された。
ガスバーナーを使っている3人のパーティー以外は下りるのが早く、私がチーズ
とイカクンでゆっくりとビールを飲んでいたら、その3人組と私だけになってしまっ
た。そこで私も3人組を残して11時40分頃に下り始めた。
帰りは奥太山林道を通らず、もともとの登山道へ入り、八反滝の下の登山口の
標柱のあるところへ出た。2時間近く掛かったが,まだ2時前だし今日はたんた
んと登って下りたと云う感じだ。
もう何処の山も雪をいただいているのだろうか。そうだとすると、そろそろこの福
井の小さな山歩記も終わりにしなければならないかもしれない。何か寂しい気分
になる。「秋の日のウ゛ィオロンの/ため息の/身にしみて/ひたぶるに/うら
悲し」(詩が間違っていたらごめんなさい)の気分であり「さんま にがいかしょっ
ぱいか」の気分なのだ。
帰り道、荒土町の日吉神社の境内を散策する。銀杏の落ち葉が周囲一面を黄色
に染めて,いい雰囲気を醸し出している。時々ひらひらと黄色の蝶が舞うように
葉っぱが落ちてくる。静かだ。その昔この辺は銀鉱山で栄えたと云う。