柳田國男著「秋風帖」
秋風帖という本の中身を見ると、秋風帖という本の題になっている章が半分程占めている。それで、ざっと目を
通してみたが、おおよそ浜松から多治見へ歩いた道筋について書かれていて、根尾村とは全然関係がなかった。
他に「木曽より五箇山へ」という章があり、こちらは上松から城端あたりを歩いている。そして「佐渡一巡記」がある。
最後に別枠という感じで「峠に関する二三の考察」と云う章があり、目を通すが、ここにも蝿帽子峠や根尾村のこと
は出てこない。
やっと根尾谷の字を見つけたのは、「佐渡の海府」という章の中であった。ここでは、婦人労働者の衣服について書
き留められている。その部分を抜き出してみる。
「曾て越前から美濃の根尾谷へ越えた時に、根尾の宿を眼の下に見る岡の端の地蔵堂に、常に幾つかの山袴が
脱いで置かれるといふ話を聴いた。其は奥在所の女たちが市に出て来るのに、爰迄は山林の風俗を保ち、町で
は笑ふから之を脱ぐので、自然に一つの境界線が出来たのである。」
この岡の端の地蔵堂というのが蝿帽子峠みたいなのですが、ちょっと期待した内容ではなかったですね。
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