隠れ家周辺点描


石崎奉燈祭


能登の祭りはキリコだ。この周辺点描の「焼き鳥太鼓」でもちらっと触れたが、簡単に云うと大きな行灯を
夜中に担いで回る祭りなのだが、ここ石崎町(和倉温泉のすぐ近く)のそれは、キリコと呼ばず奉燈と呼ぶ
12mから15mもある超特大ものなのである。漁師の町だったので、大漁を祈願したものなのだろう。



午前0時頃、八幡神社近くの堂前広場に通じる細い道へ、6基の奉燈が進んで来た。道に面した家々では
そこら中を開け放って、多分親類縁者だと思うが、酒盛りをして奉燈の巡行を待っている。前日、飲み屋で
聞いた話では、誰でもそこらの家に寄って酒を飲まして貰えるのだそうである。昔の話だと思いますけどね。



笛太鼓鉦の祭囃子、さっかさい さっかさいさい の掛け声と共に巨大奉燈がやって来た。熱気に包まれ、
迫力満点、興奮の渦である。100人ほどで担ぐ特大御輿と云う感じなのだが、上に囃子方を含めて6・7人
は乗っているし、重くてなかなか進めない。まあ、そんなにすいすいと進んでは面白くないが、6基の奉燈の
中には、担ぎ手が足りないのか疲れきってしまったのか、持ち上げたと思ったらすぐに下ろしてしまったり、
担ぎ手のバランスが悪くて、やたら傾いて危なっかしいのもある。



堂前広場に6基が勢揃いする。それぞれ堂前広場に入ると、前後左右に動き回って最後の見せ場を盛り上
げるのだ。密集した見物客の方へ向かうと悲鳴と嬌声が上がる。草履が片方脱げてしまった人やら大変な
騒ぎである。かくして午前2時、それぞれの奉燈は自分の地区へ戻って行き、広場の興奮は終わりとなるの
であるが、その最後の時に事故が起こり、ケガ人が運ばれて行った。

それから我々は車に戻らねばならない。特設の臨時駐車場から無料の臨時バスで祭り会場まで来たのだが
それも会場から一番遠い駐車場に停めてきてしまったのだ。なんと帰りはバスが運行されていないではない
か。こんなことがあってよいのか、などとブツブツ言いながら、深夜の道を30分以上も歩いたのである。隠れ
家に着いたのは、午前3時15分だった。

能登はまだまだ素朴だ。飛行場やら能越道やらで、必要以上に大勢の人達が押し寄せることにならない様
に願いたいものである。

(’01・08・05)


翌日のテレビのニュースで、昨夜のケガ人は22才の女性で、即死状態であったと報された。まことに残念な
ことが起きてしまいました。 謹んでご冥福をお祈り致します。


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