還暦つれづれ草
蟹が来た
大正5年生まれで今年89歳になるカミさんのおふくろさんが、朝方越前蟹を持ってきてくれたのだ。
蟹などは自前で購入して食べることなどまずないので、おう!今夜は熱燗だなと思わずにんまりして
しまうのだが、カミさんはこんなことしなくてもいいのにと云う。正月に渡したお小遣いもこれで無くな
ってしまうのにと呟いている。 もっとも、正月だから小遣いはあちこちから貰ってはいるのだろうが。
我々が結婚した頃、おふくろさんは今のうちのカミさんより5歳位若かったのだ。ずいぶんと年月が
過ぎたのだなあと思った。玄関からの階段を下りながら「昔は何でもなく降りられたのにねえ」などと
云いながら、それでもしっかりとした足どりで降りて55・6才になる息子の車に乗って行った。
今日は晴れたり曇ったりで平年並みの寒さだろうか。一昨日の途中で引き返した初歩きのせいで、
両脚のふくらはぎの筋肉が痛んで、普通の人ならとっとと登って行くようなところなのにと体力の無さ
が気分を少し憂鬱にしていた。夜、ひと風呂浴びてからビールを飲みながら蟹をいただいた。美味しく
てアルコールもすすんで、次ぎに熱燗となった。酔いがまわって少しほんわかした気分になり、憂鬱な
気分も消えてゆくようだ。おふくろさんのお陰なのだ。子を思う母親の気持ちは有り難いものだ。
正月に孫達が集まった時に、おふくろさんから出る話はいつも昔の同じ話かもしれないが、それを
また同じ話だと云わないで、おふくろさんが心ゆくまで話ができるよう相づちを打って聞いてあげなけ
ればいけないのだなと、いろいろと想い出して考えさせられたのである。
('05年1月 8日)
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