北陸の峠道
春日野峠
武生と河野の間にある峠で、山中峠や木の芽峠が使われる前は、敦賀から海岸沿いに河野へ、
そして武生(府中)へ出るときに使われたのだそうだ。その後も重要な役割をはたして、新道が造
られたり、トンネルが掘られて春日野新道と云われる道も造られ、旧8号線として使われた時期も
あったのである。長い歴史をもった峠だが、やっとその役目を終え、トンネルの崩落により車が通れ
なくなって、静かな昔に帰りつつある様に思える。
旧国道8号線(武生市道第2056号線)沿いの石仏と石碑
武生トンネル手前の春日野から県道205号線へ、中津原トンネルを出てすぐに左へ登ると「旧8号
線通行止め」の看板へ突き当たる。石仏と石碑が建っている。そこに車を止めて右方向へ歩いて行
くと間もなく崩落して通行止めとなっている春日野トンネルに着く。
武生側入り口 河野側 「賛化阜財」は福井藩最後の藩主源慶永の書によるとされる
今月9日に来た時は、トンネル前を左の道跡を辿り稜線に出たのだが、方角を勘違いして峠と反対
方向へ歩いてしまい、地図も無く午後から歩いたのでやめたのだが、稜線には古道みたいな歩き
易い道が続いていたのである。道はいくつもあったのかも知れない。この峠道が何処を通ったのか
その古道の跡が残っているのか全く判らないのが物足りない感じではある。
春日野峠
そこで今日はトンネル左側を這い上がってみたらすぐに峠へ出た。トンネルの上はトンネルの長さ
だけ道が残っているという感じだ。しかし谷みたいに深い鞍部となっていて、両斜面に木が少ない
のが不自然な気がする。尾根をV字型に深く削り取った感じなのだ。踏み固められた峠道という感
触がない。お地蔵さんが無いのも寂しい。確かにここは春日野峠だが古道がここを通っていたのか
は判らない。
河野側へ降り、具谷へ旧8号線を歩いた。旧国道と云っても舗装なしだから、轍の跡は川となって
雪解け水が流れていて、普通の車では走りたくない道だ。でも今日は良い天気で気持ち良く歩い
て途中具谷集落へ下り、現在の国道8号線を具谷第一トンネルの手前まで歩き旧8号線を戻った。
帰り道は春日野トンネルの中を歩こうと思ったが水浸しだったので、また峠へ登り、斜面を這い上が
って電波中継所の管理用道路へ出て車の所へ戻った。旧8号線を武生の方へ歩いてみたが、すぐ
に全面通行止めとなり、ブルドーザーでもなければ通れない状態だった。
今年の歩き納めとなった春日野峠は晴天に恵まれ、峠からは真っ白な白山連峰も眺めることが出
来た。泉鏡花の短編「雪の翼」では春日野峠は大雪だった。鏡花の作品は「高野聖」もそうだが薄
気味悪いものが多いが、今日の春日野峠は青空のもとすがすがしい一日だったのである。
<歩いた足跡>
(’01・12・29)