病院の風景

隣の爺さんや嫁さん達

私の両側のベッドもいい爺さんである。左側(窓側)の爺さんは、頭髪が白く薄
い。言葉がとても 聞き取りにくい。それに引き換え、奥さんと思われるばあさん
は、とてもしゃきしゃきしていて、「沢山食べなきゃ あかん」とか、「いつきても寝
てばかり居る」とか、非常に口うるさいのだ。
体の調子が悪いから入院しているのだし、「刺身でも買ってこようか」「何食べ
たい」と、矢継ぎ早に言わ れても困るではないか。この爺さんは、決して寝て
ばかりではないし、病院で出される物を食べていれば 十分な様になっているの
である。
この私でさえ、胃も腸もなんともないのに、何故か2週間おかゆと薄味のおか
ずが少し付いただけだったが、出される物以外に食べたのは、いよかんだけだ
った。それでも目方は減らなかったのだ。
この爺さんは、奥さんに対しては口数は少ない。これは正解である。いちいち
口答えしていたら喧嘩に なってしまうだろう。えてして口うるさい女は、自分の
言うことは正しいと思って譲らないうえに、相手の 気持ちなどは考えないもの
なのだ。

向かいのウロチョロ爺さんの嫁さんは、度のきつい眼鏡をかけて見かけはい
まいちだが、なかなか しっかりした人だと思った。旦那のあまりのふがいなさ
に、少しいらいらしている様子が窺えるが、息子が 見舞いに来た時の会話の
中で、ときの法務大臣を的確な言葉で批判していたのだ。その数日後、当の大
臣は辞めてしまった。

右隣の爺さんは、しっかりした言葉づかいで体の動きも軽い。多分まだ若いの
だろう。寝言もしっかりと した話し方だった。
しかし、何処も女性の方がしっかりしている。旦那より若いせいかもしれないが
男は、年を取ると何も しなくなる人が多いからではないかと思う。女性は家事
等やることが多いのであろう。



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