福井の小さな山歩記
白木峰
(1596m 八尾町と岐阜県の境)
山の仲間が次々に白木峰へ登ったと云うので、負けじと私は小白木峰まで脚を延ばすことにして
はるばると190km近くも運転してやって来たのである。朝5時に家を出て3時間、いやはや遠い処
だ。車で標高1300m地点まで登ってしまう。絶好の天気でるんるん気分でやって来たのだが、駐
車場よりだいぶ手前で車がごたごたしている。戻ってきた車の爺さんが、満員で停める場所がない
ですよと言う。そこで少し下がった処から本来の登山道へ入れるので、そこから登ることにする。それ
でも次々と車がやって来て上へ上へと登って行くのだ。
ブナ林の優しい道
ブナ林を登る整備された道で、こんなに良い道があるのに利用する人は少ないみたいなので残念
な気がする。25分程で駐車場のすぐ上で道が合流するが、そこからは急登となり木の階段が多く
ほとんど階段状と云ってよいくらいの道が頂上付近まで続くのである。
短い距離の間に2回も舗装された林道を横切る。ずーっとその林道を歩く人も沢山いるのである。
ニッコウキスゲやギボシが沢山咲いている処に出ると登りも終わり、なんと林道もそこまで来ていて
ヘリポートまであるのだ。その頃から空は一転して風と共にガスがかかって来て寒くなってきた。そ
こで白木峰を通り越してお花畑に向かう。緑の高原と云う感じの中を木道が続き、ニッコウキスゲが
咲き乱れ、ガスが流れる中で、負けじと一面明るく輝いているという感じなのである。
白木峰と前白木峰の間のお花畑
沢山の人がやって来るのもうなずけるのだが、「浮島の池」という池塘から引き返すときに、続々と
団体さんが一列になって(木道だから当然だが)やって来る。先頭のおばさんに「何処か休む処はあ
りますか」と聞かれ「池の周りで」と答えたが、多分満員御礼で座るどころではないかも知れない。
浮島の池と云う池塘
白木峰の頂上へ戻るが、ガスはますます濃くなりビールどころではない。でも時間はまだ10時22分
なので小白木峰は往復出来るので、そちらの道に足を踏み入れた。10円玉が沢山供えられている
石仏を過ぎると下りになる。しかし前方で雷鳴だ。そしてすぐにぱらぱらときたので小白木峰は断念し
て引き返した。これは正に正解だったのである。もし向かっていたら恐ろしいことになっていたかも。
曇り始めた頃の白木峰
本格的な雨になってきたので合羽を着て下山とする。車に辿り着く少し前には雷が頭の上で鳴り、風
と雨で、ちょうど昼頃なのだが外でゆっくり食事どころではない。車の中で食事をしたのだが、林道の
駐車の列はだいぶこちらへ近づいていたのである。
時間はあるし雨があがれば猫坂峠へでも寄れるかなと思いながら林道を下り、国道472号線を八尾
の街へ向かう。その時異変を感じた。臭う。温度計を見ると振り切れているではないか。いそいで車を
停める。まだ山の中で、県営の水力発電所の建物の前だった。中からゴーッと発電機が廻る音がして
いる。携帯電話も当然の様に圏外だ。とりあえず少し冷えるのを待つしかない。
ついに恐れたものがやって来たという感じだ。距離計は丁度21万7千キロだ。今まで故障らしい故障
がないという良い車だった。ラジエーターに1リットル程水を入れて走りだしたが、すぐに温度計は振り
切れてしまう。休んでは走り走っては休み、一度は冷める前にラジエーターの蓋を開けてしまい、ドドー
ッとばかり熱水が噴き出した。この時は丁度沢の処に停まったので、4リットルばかり給水したのであ
る。
こうして10回以上停まっては走りして八尾の街の入り口に辿り着き、ついにエンジンが停まったので
ある。JAFを呼び待つこと1時間、車を富山市内まで運び修理となった。運送料9600円、修理代1万
240円、大雨洪水警報の中、北陸高速道を温度計を気にしながらゆっくり走って帰った、家に着いた
のは夜の8時30分、大変はらはらした一日だった。財布には千円札が1枚しか残っていなかったので
ある。
(7月13日)
<白木峰の足跡>