還暦つれづれ草


懐かしのシェーン

64歳の誕生日を迎えた。なにはともあれ、あちこち身体はガタがきているけど、元気でここまで生きられた
のだがらお祝いするに値するかも知れない。埼玉にいる息子の嫁さんが、誕生祝いに色とりどりのバンダナ
を贈ってくれたので、次回の山行からは格好良くバンダナの鉢巻きといこう。

誕生日の夜は、また山菜採りにやって来た能登の掘っ建て小屋で、コシアブラの天ぷらや、慌ただしくスー
パーで買ってきた刺身や鯖の昆布じめ等々を肴に熱燗だ。いつも顔を出す「櫓」で飲むと、後かたづけがなく
てカミさんとしては望むところだったらしいが、今晩は懐かしい西部劇「シェーン」が放映されるので、テレビを
見ながらということにしたのである。

「シェーン」は私の中学校の頃に見た映画で、まだテレビ放送が始まったかどうかという頃で、総天然色だっ
たし、その最後の拳銃さばきと共に印象に残っている映画なのだ。カウボーイが牛を追っていた時代から人々
が土地に定着して生活を始めた時代へとの変化の中で、アランラッド演じる流れ者シェーンは、そうした時代
の流れに融けこめずに寂しく去って行くのである。背景として時代の流れが描かれていて西部劇としては珍
しい部類に入ると思うし、子供が重要な役割をもって描かれている西部劇も珍しいのではないか。テーマ音楽
も流行った。

子供の頃見た西部劇で、この他に印象に残っているのは「大平原」だ。白黒で当時すでに古い映画だったが
汽車が燃えている橋の上を通過するところが記憶にある。それから場末の映画館で見たヘンリーフォンダの
「荒野の決闘」だ。西部劇ではないが同じくヘンリーフォンダが主演した「怒りの葡萄」、イタリヤ映画の「自転
車泥棒」などが強く印象に残っている。

私の誕生日の話が映画の話になってしまったが、昔はよく映画を見たものだ。勿論、この印象に残っている
映画の他にも、伴妻ものやエノケンのものなど沢山見ている。中学校の時も高校の時も遠足や修学旅行に
行けない生徒は引率されて映画を見に行ったものだった。しかし、映画の見始めは、夏休みの夜、小学校の
校庭で行われた映画会で上映された「ジャックと豆の木」だったのではないかと思う。

「シェーン」を見たあと、そんな古い映画のことを懐かしく想い出していたのである。

('03年4月25日)


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