北陸の峠道


棚野坂と堀越峠


棚野坂は名田庄村口坂本と京都府は美山町大及を結ぶ峠道で高浜街道の古い峠だ。街道中の一番の
難所だったと思われる。やはり鯖を中心に若狭で獲れたた海産物を運んだのであろう。やがて堀越峠の
整備が進むと棚野坂を通る人もいなくなってしまったのだ。



坂尻のこの橋を渡って真っ直ぐに行く

清水町の広域農道から8号線、27号線、162号線と2時間半掛かって口坂本坂尻へ。8時50分にこの橋
でいいのかなと思いながら南川を渡って山へ入る。日陰なので湿って鬱蒼とした感じの道を不安げに登って
行くと、やがて道は広くなり峠道特有のU字型のくねくねとして登って行く道が現れる。歩きやすい方に道が
付けられるから、道が何本もある感じになり、平行している場合もある。



こんな道が多い

登りが一段落すると平坦な広い道となって陽射しを受けるところにでる。時折枯れ葉がシャワーの様に降り
そそぎ、辺り一帯に黄色い葉がきらめく様で美しい。
時々くねくねした古道を歩いてみたくなり入り込むが、倒れ掛かった枝や時には道に生えた木等を除けなが
ら苦労するが、結局はさっきまで歩いていた道の少し先へ出るだけなのだ。

明るい黄色い落ち葉の絨毯の道が続く。いつも一人の山行きが多いが今日は特に何か寂しい感じがするの
だ。山だと誰か登ってくる可能性があるが、この峠道ではまず人には会いそうにないからかも知れない。でも
この道は足跡などから歩く人が案外多い様に感じられる。小浜山の会の冊子やその他ホームページ等で知
らされているからだろう。



峠手前の六地蔵

やがて六地蔵が道の脇に現れる。側の木に京都の人の説明板が取り付けられており、また西畑越えの道に
ついても少し離れた分かれ道の方に取り付けられている。ここが分岐点なのだ。西畑集落まで4時間とある。

六地蔵からすぐに県境の稜線に出る。ここが峠で、ハッキリしないが斜めに横切って反対側へ降りて行く様に
思われた。少しうろうろしたが、そこでゆっくりと食事とした。汗をかいたのは初めの登りだけで涼しくてビール
は飲まなかった。約2時間15分くらいで峠に着いたのだった。

稜線を歩き、電波中継所用の管理道路を下って堀越峠に出た。昭和26年に開通した自動車用道路だがトン
ネルが出来て、今はオフロードのバイクが通るだけみたいだ。現在は古い峠道を辿るのは難しいらしい。未舗
装の旧車道の峠は静まり返っていたが、そこから歩いて降りるのは遠かった。切り立った断崖の上など飽きな
い景色なのだが、ここを降りてもまだ162号線があると思うと気が重かったのだ。
一時間程で162号線に辿り着く。そこから車が行き交う舗装道路を歩いてまず道の駅名田庄に。下道は暑く
たまらず休んで持ってきた缶ビールを飲んだのだ。これは美味かった。



静かな堀越峠

足取りも軽くなって平坦になった162号線を歩いて、坂尻に近くなってきた時、道の下の畑のおっさんが声を
掛けてきた。距離があるのと、ひっきりなしに通る車の音でほとんど聞こえず、「何処から来なすった」らしい言
葉がやっと聞き取れて、「福井から」と叫び返したが後は耳に手を当てるがだめで、向こうも諦めて手を振って
別れたのだった。今時こんな処を歩く人間はよほど珍しかったのかもしれない。

3時15分にやっとのこと坂尻の橋に戻ることが出来た。まだ2時間半以上車を運転しなければならないのだ。

(’01・11・24)

<歩いた足跡>



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