福井の小さな山歩記
越前禅定道から白山
18日(金)市ノ瀬から越前禅定道を歩いて殿ケ池避難小屋で泊まり、19日(土)御前峰(2702m)に
登り、帰りは砂防新道で別当出合に降りたのである。六万山・指尾山の間は紅葉の真っ盛りで、天気
も良いのでとても素敵な尾根歩きだった。
私は昨年の10月27日に市ノ瀬から禅定道を観光新道の分岐まで歩いて別当出合へ降りている。それ
以来この道が気に入って、一度白山まで登ってみたくなったのだ。カミさんもきっと気に入ってくれると思
うし、寝袋もあるのだから金をかけずに高山気分を味わい、紅葉を愛で、昔の人達が辿った登拝道を歩き
遺跡にもふれて、遠くいにしえの人々の生活に想いを巡らすことも出来るのだ。
季節は昨年と同じだが、ザックは重かった。寝袋に水、それも殿ケ池避難小屋は水が無いしそこまでの
間にも水が無いので沢山持って登らねばならない。16日に白山は初冠雪とあったが、今日は気温が高
く歩き始めから半袖1枚だ。
白山をバックに私の勇姿? 指尾山にて
六万山に登ると紅葉のトンネルの中となり素晴らしいの連発だ。そして指尾で展望は一気に開け、これま
た素晴らしい。両側が切り立った崖で左に湯ノ谷、右に細谷川、白山釈迦が岳、御前峰、大屏風から別山
ちぶり尾根、そして紅葉をめでる。今日は最高の日だ。
二人の男の方が降りて来た。一人の方は別当出合から登り観光新道途中の分岐からこの道へ入って市
ノ瀬へ降りるとのこと、これは紅葉をゆっくり味わうにはこの時期良いコースだ。こんな処で人に会うとはと
言っておられた。もう一人の身軽な方は、この道はなかなか大変だと云うようなことをつぶやいていた。
観光新道と禅定道の分岐から 日陰の処がすごく鮮やかだったのだがこのカメラでは...
観光新道へ出ると、もう前後左右遮る物無し、右足元の斜面を見て思わず歓声を挙げた。今日一番の鮮
やかな色付きだった。それからは少し歩いては振り返って景色を眺めるという状況でなかなか進まない。
陽が沈まないうちにと歩くが、殿が池避難小屋が見えてからでも長く感じた。
歩き出してから6時間、4時を廻って小屋に到着。小屋には誰もおらず我々だけだった。すぐに食事の用意
ラーメンに具を付け加えて量を増やしてカップ酒をちびちびやりながら食べる。残った汁におにぎりを入れて
雑炊にする。暗くなってから強い風が吹き出した。数時間は吹いていたようだ。どうやら天気は下り坂らしい。
朝 殿ケ池避難小屋に別れをつげて
よく眠れないが、それでも10時間も寝袋の中なので睡眠時間は大丈夫みたいだ。朝も雑炊。6時半に小屋
を後にする。高曇りで周囲の山ははっきりと見える。馬のたて髪を登り蛇塚の石積みの横を通り黒ぼこ岩へ
静かな弥陀ヶ原を歩いて五葉坂を登り誰もいない室堂に到着。建物の陰には雪がある。8時になっていた。
すべての扉が固く閉じられた白山室堂 着いた時は誰も居なかった
すべて閉まっていて、すぐ左の白山荘と云う建物は避難小屋だと思っていたらこれも閉まっていた。それば
かりかトイレも鍵が掛かっていて使えない。水だけはあったので助かったが、我々は昨日の朝もっと早く出
ていれば室堂の避難小屋へ泊まろうかなどと思っていたのだ。
***10月21日現在の登山道情報では「冬期は白山荘を避難小屋として開放、ただしトイレは使えない」とあり***
そんな訳で我々が一番乗りで、誰も居ない室堂の正面入り口にザックを置いて御前峰へ向かう。40分で
頂上。隣の剣ケ峰が荒々しい。間には雪そして池が見下ろせる。遠くの山は見えない。一人二人と室堂の
前に人影が見え始めた。
今日一番乗りのカミさんとその後ろの風景 お池巡りはせずに引き上げる
室堂に戻り正面に陣取ってコーヒーを沸かしたりしていたら次々と登って来る人で賑わいだした。見ていると
多くの人が私がしたように白山荘の扉を開けようと試みるのである。そして他に入り口は無いかと周りを回る
のだった。
室堂から下ろうと立ち上がった時、杖をついた腰の曲がったお爺さんがにこにこしながら到着したのだ。すかさ
ずお爺さんはお幾つですかと声が飛ぶ。耳がだいぶ遠いらしい。それでも判ったとみえて77才との答えが返っ
て来たのだ。すごい、私より14才も年上だ。私もまだまだ山へ登れそうな気がしてきた。
帰りは別当出合から市ノ瀬まで歩かねばならないので、脚の負担を考えて砂防新道を降りた。それもゆっくり
と紅葉を眺めながらだ。中飯場から別当出合までの道は紅葉真っ盛りで、特にゆっくりと歩きたい処だったが
途中から雨がぱらつきだしてしまった。幸い濡れる程ではなかったので市ノ瀬に向けて歩き出したが、10分
も歩かないうちに乗って行かないかとの車あり、天の助けとばかりに甘えることにした。
別当出合 今日は一度も陽は射さず 雨が降り出した
でも、歩いたとしてもこの道の両側はずーっと一面の紅葉真っ盛りで、時間も忘れて歩けそうだった。想い出
に残る素敵な2日間だった。勝山の水芭蕉で汗を流し、焼き肉セナラで栄養をつけて帰ったのでした。
(10月18日・19日)
<足跡>