福井の小さな山歩記
姥ケ岳(1999・10・31)
姥ケ岳(1453.6m)の頂上は素晴らしい眺望が開けていた。登って来る人が皆ここ
に着いたとたん感嘆の声を上げる。雪を頂いた白山、遠くには白い北アルプスが
連なって見える。右の方にも大きな山塊がどっしりとある。皆さんそれぞれに御嶽
だ北岳だ乗鞍だと山の名前を上げて楽しんでいる。
反対側には能郷白山が控えていて、頂上に向かって伸びる登山道が見える。午
前10時半を過ぎた頃で、空気が澄んでいてとても鮮明に見えるのだ。みなさん
今日は満足している様子。「ここは一押しの山だな」という声も聞こえてきた。しか
し、ほんとうにおじさんとおばさんばかりなのである。
今日は8時15分から登り始め、紅葉の中落ち葉を踏みしめながらゆったりと歩
けた。一時間程で最初のピーク「ブナ林」に着く。素敵な場所だ。良く手入れがさ
れている。全体に登山道も笹などがきれいに刈られているのが目についてうれし
い。ここ「ブナ林」でお弁当をひろげてゆったりと時間を過ごして帰る人も多いらし
く、帰りに,そうしているご夫婦と会話したが、今日はあと一時間ばかり歩いても
頂上まで行くべきだと思った。
「ブナ林」からは水芭蕉の群生地まで下って,また登るのだが、なだらかな登りで
頂上のだいぶ手前からは平坦な道になり、そのまま頂上に達する。私はこういう
道をゆっくり歩くのが好きなのだ。この山は私にぴったりの優しい山なのである。
下る途中に猫連れのおばさんに会った。犬を連れて登る人は何回も見掛けたが
猫の首にひもを付けて登っている人は初めて見た。ひもは要らないように思うの
だが。今日は登ってくる人から、「あとどのくらいですか」とよく聞かれる。そのた
びにいつも「もう少しです」と答えているような気がする。
時間に余裕があるので、紅葉を楽しみながら林道をゆっくりと下って、平家平の「
トチノキ広場」へ寄ってみた。樹齢400年以上と云う大野市指定の天然記念物「
大トチノキ」を背にして腰を下ろし、厳選小豆使用・高級つぶあん・栗入りと云うア
ンパンを、ダイエー優勝記念30円引きのペットボトルのお茶を飲みながら食べる
美味しい。こうして,しばし至福の時を過ごしたのであります。
大昔、山頂北側の姥岩に山姥が住んでいたと云う。山姥というと気味の悪い婆さ
んが想像されるけど、姥ケ岳は綺麗な銀髪の端正な身なりのやさしいおばあさん
といった感じである。