北陸の峠道


豊原寺跡より榎峠


福井市の隣、丸岡町の山縁に平泉寺に対抗する勢力を持った豊原寺があったというのは最近まで
知らなかった。泰澄大師により開かれたと伝えられ、最盛期には寺坊三千を数えたという。平泉寺の
白山禅定道に抗して独自に豊原白山禅定道を開いた。豊原寺から榎峠を越えて吉谷不動−近庄峠
−冠岳・浄法寺−岩屋鈴厳寺−大日山等々と続き白山へ向ったと云われる。



榎峠はこの左側を奥へ入って行く

今日は豊原寺跡周辺を散策した。経塚、代々院主の墓、六本木表参道、地蔵堂、塔の池などなど、
広い地域に展開しているので、すぐ場所の判る処だけにして12時半過ぎに榎峠に向かうことにする。
豊原寺跡の左を奥に向かう草に覆われた細い道を行く。竹田へ越える道である。

間もなく林道を越えるが、そこに竹田まで4kmの案内がある。暫く沢沿いの日陰の中の真っ直ぐな道
だったが、やがて樹木の無い谷間を歩くことになり、風も無く蒸し暑いので汗がにじむ。右の谷へ入る
道が現れ、そちらの方に赤や黄色の布が沢山下がっているので、ついそちらへ引かれてしまう。最近
歩いた跡がくっきりしていて、目印の布は豊富にあり迷うことはない。

ずっと狭い谷筋だったが、やっと斜面を登ったと思ったら素敵なV字型の古道という感じの道に出たの
だ。そして尾根道とぶつかる。ここが峠かと思ったら、数m下を林道が通っているではないか。この道
は榎峠への道ではなかった。しかし地図には載らないいろいろな道が通っているのだなと興味が湧く。

急いで引き返して布が付いて無い道を行く。要するに曲がらず真っ直ぐに歩けばよかったのだ。しかし
こちらは雑草に覆われて足元不安定な道なのである。それに暑い。真夏の低山歩きという感じで汗で
ぐっしょりとなっている。斜面を少しじぐざぐに登るのだが、ここで両腕がキズだらけになる。道が完全に
胸ぐらいの高さの草に覆われている。額アジサイが咲き乱れているのだが、登っているときには気がつ
かない。雉の親子が突然に近くから飛び立って驚かされる。そして榎峠・海抜320mに到着。

 

榎峠・峠には何もなかった                         少し手前にあった石像

峠には何も無かったが、30mくらい手前の斜面に小さな石像があって峠道を見下ろしていた。尾根に
登って腰を下ろしたら風が当たって気持ちが良い。お茶を飲んでバナナなどを食べて一息ついた。

豊原寺全盛の頃は、この峠辺りから白山を「伏拝」したとか、あまり見通しが良いとは思えないのだが。
この峠を越え、竹田側へ降り火燈山に登って白山を拝んだのではないだろうか。いずれにしてもこの峠
は、大内峠とも通じる重要な峠であったし、永い歴史と共にあった峠なのである。

(’01・06・17)



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