還暦つれづれ草


順番


朝の通勤時、交差点で左へ曲がる車が左側車線に長い列をつくる。ところが、長く連なっている
車の右側を走り抜け、渋滞の先頭近くに割り込む車がある。これは、はなはだ面白くないことだ。
やむを得ない場合も勿論あるだろうから、割り込んでくる車の邪魔をしようとは思わないが、明ら
かにずるい車もあるのだ。

駅のホームで並んで列車を待っていて、いざ乗るときに横から割り込んでくる人もいる。これなど
は、マナーが悪いなあ、と云うことで終わってしまうのだが、次のような場合はマナーが悪いとは
言わない。

今年は、ある山では室堂に泊まるのも予約制で、ある日などは500人のキャンセル待ちになった
そうである。ところが、会社の威光にものを言わせて、その500人のキャンセル待ちの一番前に
割り込むことに成功した人がいたらしい。こう云うことが出来る企業と云えば、だいたい想像がつく
のであるが、世の中、こういうことが出来る人が重宝がられて出世するのでる。力量があるとか、
よく気がつく男だという具合である。

夏休みのなので、お父さんお母さんと一緒での山登りを楽しみにしている子供達も、キャンセル待
ちの中で何も知らずに順番を待っていたことだろうにと思う。自分さえよければ人はどうでもよいと
いうのは困ったことである。そういう様に会社の中で育ってきたのかもしれない。

先日、家の前で久しぶりに町内のお年寄りと会って少し言葉を交わした。歳を訊いたら「よく訊いて
くれました。84歳ですわ。だんだん近くなってきましたわ」と言うので、順番ですからね、と言ったら
「順番!お兄さんなかなかうまいこと言いなさる」と、そこでお互い大笑いしたのである。

私はまだお兄さんなのである。順番に行きたいものである。

(’00・08・30)



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