還暦つれづれ草
お医者さん
我々の年代になると多かれ少なかれ医者のやっかいになっている。私などは脳梗塞で
倒れたのだから、毎日朝晩薬が欠かせないし毎月一回は病院へ通って担当のお医者
さん(先生と呼ぶべきなのかな)のお世話になる。
私が昨年救急車で運ばれてから14ヶ月ばかりになるのだが、今月から担当の先生が
交代した。これで3人目だ。入院した時の担当の先生は元気の良い若々しい女の先生
で、親切にいろいろと説明してくれていいなと思っていたら、私の退院と時を同じくして
転勤されてしまった。
次の担当の先生は若い男の先生だったが、一番最初の診察でとまどってしまった。
カルテを見ているはずなのに、横になってお腹を見せてくれなどと言う。質問の内容も
どうもピントが外れている。こちらが浮かぬ顔をしていたら、その内「あなたは何で病院
に来ているのか」と言う始末なのである。
そこで「脳梗塞で倒れて救急車で運ばれて入院した」などと言うと「ああそうでしたね」
と言って、やっと正常な軌道に乗ったという感じになった。
朝、コレステロール値を下げる錠剤を一錠、朝晩血管を広げる薬を一錠づつ飲んで、こ
こ3〜4ヶ月は月一回行くたびに血液検査をした。コレステロール値は上がったり下が
ったりで、いづれも正常値より高かったが、「この程度ならまだ大丈夫でしょう」「もうしば
らく様子をみますか」という感じで、時々発生する胸の痛みを訴えたが、簡単な心電図
を取っただけで、この13ヶ月間は治療内容は全く変わらず、同じ薬を同じ量飲み続け
たのである。
そしてこの4月から3人目の先生に交代した。一見お医者さんらしくない印象がした。
タレントの山田邦子が頭に浮かんだくらいなのだ。でもこの先生は旅慣れていると云う
か端末のコレステロール値の推移を見て「高いですねえ、これじゃあと20年は難しいで
すよ」と切り出したのだ。
例によって胸の痛みを持ち出すと、傍らの看護婦に「いますぐ、トレッドミルか○○○は
出来るかな」と言って検査室に問い合わさせた。すると○○○なら出来るという。これは
心臓のエコー診断だった。
心臓の弁までがひらひらと規則正しく動いているのが見える。結果を見て「心臓がパカ
パカと動いているから大丈夫よ」「今度の診察日の前日に来て、24時間心電図のホル
ダーを付けてね」「コレステロールを下げる薬を倍にしましょう」リズミカルにとでも言うの
か小気味良いとでも言うのだろうか、こう告げられて診察は終わったのである。
便秘がちだと言ったら便秘の薬も一ヶ月分出された。前任の男の先生だったらこうは行
かなかったのである。医者によってこうも違うものなのかと驚かされた。どちらが患者の
ためになるのか。素人の私には判断出来ないが、診察料と薬代とで七千円を払うこと
になった。健保組合には2万8千円ばかりの請求が行くことになるのだろう。
('00-04-18)